犬の胃拡張捻転症候群ってどんな病気?|発症すると命が危ない胃拡張捻転症候群について解説
胃拡張捻転症候群という病気は、大型犬を飼っている方にとっては特に心配な病気として知られてきています。
しかし、胃拡張捻転症候群について名前は知っていても
- 大型犬以外の犬種もなることがあるのか
- どんな治療になるのか
- 予防や家族にできることはあるのか
など、詳しいことは知らないという飼い主様も多いのではないでしょうか。
胃拡張捻転症候群は、さっきまで元気だった愛犬が急に命の危険に陥ってしまうような恐ろしい病気です。
今回は、犬の胃拡張捻転症候群について詳しく解説します。
最後までこの記事を読んでいただき、犬にとって緊急性の高い胃拡張捻転症候群について詳しく知っておくことで、愛犬の命を守りましょう。
胃拡張捻転症候群とは
胃拡張捻転症候群とは、何らかの原因によって拡張した胃がねじれてしまうことによる様々な症状を指します。
胃拡張捻転症候群は、死亡率が高い病気で、適切な治療を行なっても20〜45%と言われています。
胃拡張捻転症候群の好発犬種は
- スタンダード・プードル
- グレート・デン
- セント・バーナード
などの大型犬〜超大型犬や胸の深い犬種ですが、バセットハウンドやミニチュアダックスフンドでも発生することがあります。
高齢犬での発生リスクが高く、食後に激しい運動をした直後や早食いでの発生も多いです。
胃拡張捻転症候群になるとどんな症状が出る?
胃拡張捻転症候群は、
- お腹がパンパンに張る
- 吐きたそうにしているが吐けない
- よだれがだらだら出る
などの症状が一般的です。
これらの症状は、胃にガスが溜まって気持ち悪くなっていても、胃がねじれていて中身が出てこないことによるものです。
比較的特徴的な症状なので、このような症状が出たら「胃拡張捻転症候群かも!」と思ってすぐに受診しましょう。
病態が進んでショックを発症すると、より状態が悪くなるとぐったりして立てなくなることもあります。
ここからは胃拡張捻転症候群により発生することのあるショックについて解説していきます。
循環血液量減少性ショック
胃拡張捻転症候群では、ガスが溜まった胃によりお腹の中の重要な血管を圧迫されてしまうことで、循環血液量減少性ショックになることがあります。
胃拡張捻転症候群により胃がねじれてしまうと、口から入ってきたガスはどんどん胃に溜まっていきます。
消化管は口から肛門までの1本の管のような構造で、その一箇所が捻れてしまうとそこで内容物が詰まってしまいます。
水が入っているホースをねじるようなイメージですね。
ねじれたところより前が水でパンパンに溜まる様子が想像しやすいのではないでしょうか。
このように胃にガスが溜まっていくと、胃は風船のように大きく胃が膨らんでいきます。
大きく膨らんだ胃により、体の中の重要な血管が圧迫されると、血液が流れなくなります。
この状態を循環血液量減少性ショックといい、命に関わる病態です。
エンドトキシンショック
胃拡張捻転症候群では、胃壁の壊死によりエンドトキシンショックが発生することがあります。
胃壁の壊死と聞くと恐ろしいですよね。
胃拡張捻転症候群により胃がねじれてしまうと、胃自体への血を送る血管も一緒にねじれてしまいます。
それにより内臓へ酸素や栄養を配るのに非常に重要な血液が胃に流れなくなることで、胃が一部壊死、つまり死んでしまうのです。
壊死した胃の組織は、胃から剥がれて血流に乗ります。
たくさんの細菌が含まれる壊死組織が血流に乗って体中を巡ることでエンドトキシンショックという状態になります。
胃拡張捻転症候群の治療
胃拡張捻転症候群の治療は、外科手術です。
文字通り捻転している胃を元に戻してあげる手術が必要になります。
胃拡張捻転症候群は緊急性の高い疾患なので、迅速に手術をする必要がありますね。
しかし、現実的には来院してすぐに開腹して捻転を直すことはできません。
そのため手術前に
- 針を刺して胃のガスを抜く
- 口からホースを入れて胃のガスと内容物を抜く
- ショック改善のため点滴をする
などの治療が行われます。
これらの処置により状態が安定したら、いよいよ開腹手術により術者の手でねじれた胃を正しい位置に戻します。
ここまでが胃拡張捻転症候群の治療のための手術です。
実際の場合は、ここで終わらず胃壁を一部切って腹壁に縫い付ける、胃固定手術を同時に行います。
胃固定手術により、胃拡張捻転症候群の再発を防ぐことが可能になります。
胃拡張捻転症候群って予防できるの?
発症すると死亡率の高い胃拡張捻転症候群、できることなら予防したいですよね。
胃拡張捻転症候群は、胃固定手術を行うことで予防することができます。
大型犬などの発症リスクの高い犬種に避妊手術で開腹する場合にはそのタイミングで胃固定手術を行うこともあります。
「予防的に手術をするの!?」とびっくりされる方もいらっしゃるでしょう。
予防的な手術は侵襲性が非常に高いですが、若齢かつ安定した状態で手術を行うことができるというメリットもあります。
安定している状態で手術を行うことで麻酔リスクを下げることが可能です。
予防的な胃固定手術は、胃拡張捻転症候群の発生を80%抑えることができるので、ご家族と相談し実施することもあります。
他にも、早食いや1度の過度な食事を避けるという方法もあります。
大型犬は食事のスピードが早く、食事量も多いです。
一気に大量の食事をとると、胃にガスが溜まりやすく、胃拡張捻転症候群の発症リスクが高くなります。
1回の食事量を減らしてこまめに食事を与えたり、食後の激しい運動を避けることで少しでも胃拡張捻転症候群を発症するリスクを低くしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は犬の胃拡張捻転症候群について詳しく解説しました。
胃拡張捻転症候群は発症すると死亡リスクが高く大型犬を飼っているご家族にとっては特に恐ろしい病気ですよね。
胃拡張捻転症候群は、発症してから時間が経つと状態が悪化して手術を行うことも難しくなってしまうこともあります。
当院では、外科手術に力を入れていて、胃拡張捻転症候群に対する外科手術も行うことができます。
愛犬が胃拡張捻転症候群を発症したかもしれないという場合はすぐに、症状はなくてもご不安なことがある場合はぜひ当院までご相談ください。
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