猫の膿胸ってどんな病気?|気になる原因や治療法を獣医師が解説
猫の「膿胸(のうきょう)」という病気を聞いたことはありますか?
膿胸は、胸の中に細菌感染した液体(胸水)が貯まる病気です。
普段元気な猫でも、急に体調が悪くなり命に関わることもあるので、早めに気づいてあげることが大切です。
今回は、膿胸の原因や症状、そして飼い主さんが知っておくべきポイントをわかりやすくお伝えします。
膿胸って何?
膿胸とは、胸に細菌感染した液体が溜まる病気です。
胸の中というのは、肺や心臓の周りの胸腔という空間ですね。
胸水が溜まることで肺が十分に広がることができず、呼吸をすることが苦しくなってしまいます。
膿胸の原因は?
膿胸の原因として以下のようなことが関係します。
- 肺炎から胸腔に感染が広がる
- 交通事故や猫同士の喧嘩で胸に傷ができる
- 草などが胸腔内に入る
- 胸腔内まで寄生虫の感染が広がる
さまざまな理由がありますが、実際のところははっきりした原因がわからないことが多いです。
膿胸の症状は?
次のような症状がみられることがあります。
- 呼吸が早い
- お腹で頑張って呼吸をしている
- 体重が減る
- 熱っぽい
多くの猫は飼い主さんが猫のいつもと違う呼吸に気づいて来院されることが多いですね。
膿胸はどのような検査をするの?
動物病院では、膿胸を疑うときは次のような検査を行います。
胸の中の様子を確認する
胸の中に液体が溜まっていないかどうかをレントゲン検査やエコー検査で確認します。
液体の成分を検査する
液体成分を検査するために、まずは胸に針を刺して液体を採取します。
採取した液体は機械を使って性質を調べたり、顕微鏡を使って細菌や腫瘍細胞など、どのような細胞が含まれているかを確認します。

膿胸の治療方法は?
膿胸の治療方法で大切なことは2つです。
それは、抗生物質を投与することと胸腔ドレーンを設置することです。
抗生物質の投与について
胸の中に感染している菌を抗生物質で退治します。
抗生物質は菌が消失してからも2ー4週間ほど飲み続ける必要があります。
胸腔ドレーンについて
胸腔ドレーンとは胸にドレーンと言われるチューブを入れることです。
胸にチューブを入れると言われてもなかなか想像ができないかもしれません。
ここからは胸腔ドレーンについて詳しくお伝えします。
どうしてドレーンを入れるの?
ドレーンを入れる理由は主に2つあります。
- 胸水を抜く
- 胸腔内を洗浄する
膿胸は、抗生物質を飲んですぐに胸水がなくなるわけではなく、数日間は胸水が溜まり続けてしまうため、定期的に胸水を抜く必要があります。
胸水を抜くには、胸に針を刺して抜く方法とドレーンを設置してドレーンから抜く方法があります。
ドレーンを設置することができれば、毎回針を刺す必要がなくなるため、より安全で簡易に胸水を抜くことができます。
胸水を抜くことで呼吸がしやすくなるため、重要な治療の一つです。
膿胸は細菌感染を起こしている汚い液体なので、動物病院では生理食塩水を使って胸腔内を洗うこともあります。
どうやってドレーンを入れるの?
ドレーンは心臓や肺のある空間にチューブを入れ込みます。
「胸にチューブを入れるのは痛くないの?」と不安に感じられる方もいるでしょう。
ドレーンは胸腔内に入ってしまえば痛みは感じません。
ドレーン設置は、心臓や肺のある空間にチューブを入れ込むため、より安全な方法で実施できるように、全身麻酔をかけたり、少し眠くなるような鎮静剤を使って処置します。
全身麻酔は完全に眠った状態で人工呼吸器に繋げます。
全身麻酔は完全に寝ているので、ドレーン設置をより安全に行うことができますが、全身麻酔のリスクが生じます。
鎮静剤は、本人に意識があるものの、ウトウトし動きが緩慢になります。
全身麻酔に比べ本人の動きはありますが、ドレーン設置に十分な安全を確保できることが多いです。
どれくらいの期間ドレーンを入れるの?
ドレーンを入れてから1週間ほどは入れたままの状態で生活する必要があります。
入院は必須ではありません。
ドレーン設置時には、ドレーンが抜けないように、そして清潔に保てるようにしているため、家で過ごすことができます。
ドレーンを設置しはじめの数日は、1日に数回ドレーンから胸水を抜く必要があるため、一緒にドレーンを取り扱う練習をしましょう。
ドレーンを抜くタイミングは、胸水が溜まる量をみながら獣医師と相談しましょう。
最後に
膿胸は、ドレーンを設置して家で過ごすことが必要です。
愛猫に胸にチューブが入った状態で家で過ごすことにイメージがつかず、ご不安もあるかとは思いますが、最大限サポートさせていただきますので一緒に頑張りましょう。
膿胸は、適切な治療を受けることで、完治を目指すことができます。
ただし多くの場合は原因が特定できないため、再発の可能性もあります。
治療後も、猫の体調や呼吸の様子を注意深く観察し、早期発見・早期治療してあげることが大切です。
「呼吸が普段と違う」「元気がない」といった変化を感じたり、少しでもご心配なことがあればお気軽に当院へご相談ください。

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