犬の軟口蓋過長症とは?手術や対策について獣医師が解説
「最近、犬のいびきがひどい」
「呼吸が苦しそう」
「ガーガーと音を出して呼吸をしている」
そのようなことはありませんか?
もしかすると、それは軟口蓋過長症かもしれません。
今回は、軟口蓋過長症の症状や治療法、日常生活で気をつけることなどをわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき愛犬の快適な生活について一緒に考えてみましょう。
軟口蓋過長症とは?
軟口蓋過長症とは、漢字の通り軟口蓋が長すぎる状態のことをいいます。
軟口蓋が長すぎるとどのような問題があるのでしょうか。
軟口蓋とは口の奥にある柔らかい部分のことをいいます。人でも舌で上顎を触っていくと奥に柔らかい部分が触れますよね。
軟口蓋が長くなりすぎると気管の入り口を塞いでしまい、息が吸いづらく頑張って呼吸をしなければなりません。
これが軟口蓋過長症で起きる問題であり、短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、シーズー、ボストンテリアなど)によく見られる病気です。
軟口蓋過長症の症状
- いびきをかきやすい
- 口呼吸、パンティング(ハァハァとする様子)が多い
- ゼーゼー、ガーガーが音が出る呼吸が多い
- 熱中症になりやすい
パンティングや苦しい呼吸が続くことで、さらに呼吸が悪化したり熱中症になったりと、命の危険に陥ります。
これらの症状が頻繁に見られる、なかなか治らない場合には早めに病院を受診してください。

軟口蓋過長症は手術が必要?
軟口蓋過長症の治療方法には、手術(軟口蓋切除術)と内科的治療があります。
根本的な治療には手術が必要です。
手術をするかどうかは、犬の症状の重さや生活の質によって決まります。
息が苦しい時間が続いていたり、生活の質が下がってしまっているのであれば、手術をすることで改善することが期待できます。
軟口蓋切除術はどんな手術?
軟口蓋切除術は、長くなりすぎた軟口蓋の一部を切り取る手術です。
長い軟口蓋を切り取ることで、気管の入り口が広がり呼吸がしやすくなります。
軟口蓋切除術の流れ
実際の軟口蓋切除術は次のような流れで行います。
麻酔をかける
全身麻酔を使用します。
麻酔をかける前には術前検査を行い、予め麻酔リスクの程度を確認しておきます。
軟口蓋の長さを確認
適切な軟口蓋の長さにするために、切り取る軟口蓋の長さを確認します。
切り取り・止血
決定した軟口蓋の長さに切り取り、出血を止めて終了です。
手術後の注意点
手術のあと数日間は、喉の腫れや違和感があるため、慎重に経過を見てあげる必要があります。
次のようなことに注意をしましょう。
安静
興奮することでさらに喉が腫れて呼吸が苦しくなってしまいます。
安静に過ごしましょう。
柔らかい食事
喉に負担をかけないように、ふやかしたドライフードやウェットフードをあげましょう。
胴輪の使用
首への圧迫を防ぐため、胴輪を使用しましょう。
呼吸の変化
手術の炎症で喉の腫れがひどいと呼吸が苦しくなります。
苦しそうな場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
手術のリスク・合併症
軟口蓋切除術は比較的安全な手術ですが、いくつかのリスクが伴います。代表的なものは次の3つです。
- 全身麻酔
- 再発
- 誤嚥
手術を実施するためには全身麻酔が必要です。
全身麻酔はどのような犬種、年齢であっても一定のリスク(内臓、呼吸器、循環器への負担)が伴います。
全身麻酔をかける前には、術前検査として血液検査やレントゲン検査で全身状態を把握します。
次に再発のリスクです。
軟口蓋の切除が不十分だったときには症状が再発する可能性があります。
最後に、切除の範囲が大きすぎることで起きてしまう、誤嚥するリスクです。
食べ物や水が鼻に逆流してしまったり、誤嚥性肺炎になる可能性もあります。
まとめ
軟口蓋過長症は短頭種に多い病気です。
短頭種の犬が日常生活を快適に過ごすには、生活環境への配慮が必要不可欠です。
ぜひ、次のようなことに気をつけてみてください。
- 暑い時間の散歩を避ける
- 過度な運動は控える
- 肥満になりすぎないように注意する
- 高温多湿の環境を避ける
- 首輪ではなく胴輪を使う
そして軟口蓋過長症で呼吸がしにくそうな様子が続く場合には早めに当院へご連絡ください。
当院では軟口蓋切除術を得意としています。
手術をするべきかどうかも含めて相談しましょう。

診察時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
9:00〜11:30 | ||||||||
17:00〜18:30 |