犬の肝生検について|どんな方法でいつ実施するのかを獣医師が解説
肝生検とは肝臓の一部を採取し、肝臓の細胞や構造を確認する検査を指します。
「愛犬の肝臓の数値が年々上がってきている」
「超音波で、愛犬の肝臓に変な構造物が確認された」
「愛犬の黄疸の原因がわからないと獣医に言われた」
という場合は、次の検査が肝生検になる可能性があります。
今回は肝生検について、
- どんな方法で
- いつ必要なのか
- どんな病気がわかるのか
を解説していきます。
ぜひ最後まで読んでいただき、肝生検の必要性について知っていただければと思います。
肝生検の方法
肝臓の生検の方法は、主に3つあります。
- 針生検
- 針組織生検
- 開腹での組織生検
です。
どの検査を実施するにしても、肝臓から出血した時にしっかりと血が止まるかどうかの血液凝固検査をしておく必要があります。
針生検
針生検は皮膚から超音波をガイドに、肝臓に針を刺して細胞を取ってくる検査です。
3つの生検方法の中で、最も一般的に実施されています。
理由は、麻酔が必要なく、針が細いため比較的安全に実施可能だからです。
デメリットは、一回で取れる細胞数が少ないことです。
病気と判断がつく細胞が、取れているか、取れていないかにより診断結果が変わります。
また、針生検では肝臓がどういう構造をしているかは分かりません。
そのため、肝臓の構造をみて診断をする必要のある病気は、確定診断ができません。
直接肝臓を見て細胞を取ってくることができないこともデメリットと言えます。
針組織生検
針組織生検は、針生検よりも太い針を使用して、肝臓組織を取る検査です。
メリットは針生検よりも多くの肝組織が取れることです。
多くの組織が取れるので、肝臓の構造を確認することができます。
デメリットは
- 鎮静あるいは麻酔が必要
- 針が太いので、出血のリスクが針生検よりも高い
- 針生検同様、肝臓を直接見ることができない
です。
開腹での組織生検
開腹での組織生検は、お腹を開けて肝臓の組織を取ることを指します。
メリットは、肝臓を直接見ることができることです。
直接見ることにより、より安全に生検できる場所を探すことができます。
また、超音波では分からなかった小さな病変を見つけることも可能です。
仮に組織を採取するときに出血しても、血を止める処置をすることができます。
デメリットは
- 麻酔が必要
- お腹に傷ができる
- 他の生検方法と比べて費用がかかる
です。
肝生検はいつ実施する?
肝生検は、時間経過や内科治療では改善しない場合に実施されることが多いです。
例えば、血液検査で肝臓の数値が高く、サプリメントや薬を飲んでもどんどん悪化している場合です。
その場合は、他の検査で異常が見つからなくても、肝臓に病気がある可能性が高いですので、生検を実施した方が良いでしょう。
血液検査に異常がなくても、レントゲンや超音波検査で肝臓の構造に異常がある場合もあります。
この時も、なぜ構造に異常があるのかを調べるために肝生検を行います。

肝生検でわかる病気
肝生検でわかる病気は腫瘍から炎症、肝臓に特徴的な病気までさまざまです。
腫瘍では
- リンパ腫
- 肥満細胞腫
- 肝細胞癌
- 胆管癌
などが肝臓にできやすく、生検で診断可能です。
炎症では、肝臓に銅が蓄積する慢性肝炎などの場合に実施されることが多くなります。
肝臓に特徴的な病気では、肥満の猫ちゃんに起こりやすい肝細胞脂肪変性(肝リピドーシス)などが肝生検で診断可能です。
それぞれの生検のメリット・デメリットをしっかり比べて、愛犬に合った生検方法を考える必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は肝生検の方法、いつ実施するのか、どんな病気がわかるのかについて解説しました。
肝生検は、画像検査や血液の検査では分からない、肝臓の細胞や構造を確認することが可能です。
出血などのリスクはありますが、治療の大きな手がかりになることは間違いありません。
肝生検の方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、犬の状態に合わせて選択しましょう。
もし、愛犬の肝生検について悩まれている飼い主様がいらっしゃいましたら、一度当院までご相談下さい。
当院は外科治療を得意とする病院です。
針生検はもちろん、開腹下での肝生検もお任せいただければと思います。

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