犬の外耳炎を手術で治す?|外耳炎の手術について獣医師が解説

笑っているパグ

犬の外耳炎を手術で治す?|外耳炎の手術について獣医師が解説

外耳炎は犬の耳にかゆみを引き起こす病気です。
愛犬が耳をかゆがっていて困った経験のある飼い主様は多いですよね。
外耳炎の治療は、普段は耳掃除や点耳薬で行います。
しかし、外耳炎の治療に手術を選択することもあるんです。

今回は、犬の外耳炎の手術がどんなときに行われるか、どんな手術があるのかについて詳しくご説明します。
ぜひ、最後までお読み頂き、犬に外耳炎の手術が必要になったときのためにお役立ていただけると幸いです。

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目次

犬の外耳炎とは

外耳炎は、外耳道に炎症が起きて耳垢が溜まり、かゆみを引き起こす病気です。
外耳道とは、犬の耳の入口から鼓膜までの間の部分を指しますね。
外耳炎では、外耳道に溜まった耳垢を洗浄してから点耳薬をつけて治療することが多いです。
早期に治療をすれば、たいていの場合は1週間から数週間で治ります。

犬の外耳炎の手術の適応

「外耳炎に手術が必要だなんておおげさな」
とお考えの方もいるかもしれません。
犬の外耳炎で手術が適応になるのはどのような時か解説します。
犬の外耳炎は耳洗浄と点耳薬で治療することがほとんどです。
しかし、以下の場合は手術をしないと治らないことがあります。

  • 慢性化して耳の穴がつぶれている
  • 腫瘍ができている

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

慢性化して耳の穴がつぶれている場合

犬の外耳炎は早期に気づいて治療を始めると数週間で治る病気です。
しかし長期間放置したり、適切な治療が行われないと、慢性化して耳の穴がふさがってしまい治療に反応しなくなることがあります。
そのような場合、手術が適応になります。

腫瘍ができている場合

耳の入り口や、外耳道の中に腫瘍ができている場合は手術が適応です。
外耳道に腫瘍ができていると、通常の治療では外耳炎は治りません。
腫瘍が耳の穴をふさぎ、耳の中の通気性が悪くなり、雑菌が繁殖しやすいからです。
また、耳の腫瘍の中には良性腫瘍と悪性腫瘍があります。
悪性腫瘍である場合、早期に切除しないと命にかかわることもあります。

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外耳炎の手術の術式について

ひとくちに手術と言っても、どんな術式があるのでしょうか。
術式によっては、犬にとって負担の大きなものもあります。

以下に詳しく見ていきましょう。

外側耳道切除術

外側耳道切除術は、耳の入り口を塞いでいる腫瘍や慢性化して肥厚した組織を切除する手術です。
この場合、短時間で手術が終わり、痛みも強くありません。
また、術後に耳の形が大きく変わることもないです。

垂直耳道切除術

垂直耳道切除術は、外耳道のうち垂直耳道と呼ばれる部分だけを切除する手術です。
犬の外耳道は2つの部分でできています。
人間の耳と違って、犬の外耳道は途中で曲がっています。
入口側が垂直耳道、そして鼓膜側が水平耳道と呼ばれますね。
外耳道のうち、垂直耳道だけに腫瘍が出来ている場合は垂直耳道切除術が適応です。
垂直耳道切除術では、耳介は傷つけずに、垂直耳道だけをくりぬいて切除します。
耳介は傷つけないため、見た目が大きく変わることはありません。

全耳道切除術

全耳道切除術は、その名の通り垂直耳道も水平耳道もすべて取り除く手術です。
外耳炎が慢性化して外耳道がカチカチに固くなった場合や、外耳道全体に腫瘍が出来ている場合に適応になります。
全耳道切除術の場合は、外耳道を鼓膜の手前までくりぬいて全て切除します。
こちらも耳介は傷つけないため、見た目が大きく変わることはありません。

耳をかいている柴犬

外耳炎の手術のメリット・デメリット

最後に手術のメリットとデメリットを説明します。
外耳炎に手術が必要だとしても、なかなか手術に踏み切れないことも多いです。
愛犬が外耳炎の手術の適応になった時の参考にしてみてください。

メリット

  • 通常の内科治療では治らない外耳炎、何度も繰り返す外耳炎を根治できる。
  • 耳の痛みやかゆみが起きなくなるので、犬の生活の質が向上する。
  • 耳介はそのまま残せるので、見た目上の変化は最小限にできる。

デメリット

  • 全身麻酔による手術のため、麻酔のリスクがある。
  • 垂直耳道切除術、全耳道切除術は術後の痛みが強い。
  • 特に全耳道切除術の場合は、顔面神経を傷つけるリスクがあり、術後に顔面神経麻痺やホルネル症候群を引き起こす可能性がある。

まとめ

犬の外耳炎は比較的よく起こる病気です。
早期に発見して治療をすれば、手術が必要になることは少ないです。
また、腫瘍が出来ている場合でも大きくなる前に発見すれば、簡単な手術で済みます。

「愛犬が耳をしきりに振ったり、かいたりしている」
「耳をめくるとイボのようなものが見える」

などがある場合は、お早めに当院までご相談ください。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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