【獣医師が解説】犬の椎間板ヘルニア | 突然後ろ足が動かなくなってしまったら
「全然動こうとしない」
「抱っこしたらキャンと鳴いた」
「突然後ろ足が動かない」
愛犬にこのような症状が見られたことはありませんか?
椎間板ヘルニアに特徴的な症状で、突然起こります。
今回は犬でよく見られる「椎間板ヘルニア」についてお伝えします。
少しでも椎間板ヘルニアのことを知っていただき、いざという時に役立てていただければと思います。
ヘルニアとは?
「ヘルニア」はラテン語で、「本来あるべき部位からはみ出ている状態」を意味します。
ヘルニアという名前がつく病気はたくさんありますが、以下が犬でよく見られる病気です。
- 椎間板ヘルニア
- 鼠径ヘルニア
- 会陰ヘルニア
今回は、椎間板がはみ出てしまって、神経に問題が起きてしまう「椎間板ヘルニア」、その中でも発生率の高い「胸腰部椎間板ヘルニア」についてお伝えします。
椎間板ヘルニアとは
椎間板は、脊椎の骨と骨の間に存在しており、はみ出ることで脊髄を圧迫します。
脊髄は神経がたくさん集まっているところですから、
圧迫部分から尻尾方向に信号がうまく行き届かなかったり、神経に痛みを感じたりするのです。
犬に起こりやすく猫では稀です。
原因
加齢に伴って、症状が出てしまう場合と、
犬種によって症状が出やすい場合があります。
椎間板ヘルニアになりやすい犬種は以下の通りです。
- ダックスフンド
- トイプードル
- ペキニーズ
- コッカースパニエル
- フレンチブルドッグ
ダックスフンドは他の犬種に比べて発症リスクが10倍とも言われています。
症状とグレード
症状は多岐にわたり、重症度に応じてグレード分けがされています。
胸腰部ヘルニア
Grade1 | 痛みを感じているが動くことができる背中を丸める姿勢・階段の昇り降りを躊躇する・運動したがらない |
Grade2 | 歩くことはできるが、ふらつく |
Grade3 | 全く後ろ足を動かすことができない前足のみで歩行する |
Grade4 | 全く後ろ足を動かすことができない排尿ができない |
Grade5 | 全く後ろ足を動かすことができない後ろ足に痛みを感じない |
検査
動物病院では、麻酔をかけずにできる検査を進めていきます。
しっかりと診断をするには麻酔をかけた検査が必要です。
麻酔の必要な検査は、検査機器を持っている病院に依頼します。
麻酔のいらない検査
- 身体検査
- 神経学的検査
- レントゲン
痛みがどこにあるのか、骨や神経に異常はないかを確認します。
麻酔が必要な検査
- MRI検査
- CT検査
具体的にどこの神経に異常があるかを調べることができます。
治療
内科治療と外科治療があります。
症状によって適応となる治療方法が異なります。
内科
歩くことができている場合は内科治療を選択することがほとんどです。
内科治療では、痛み止めの薬をお出しすることが多いです。
そして、安静にすることもとても大切です。
以下のことに注意するようにしましょう。
- できる限りケージレスト(四方囲まれたケージで過ごす)
- ソファや椅子に上り下りさせない
- 階段は使わない
- 散歩は控える
症状が悪化した場合は様子を見ずに一度病院へご相談ください。
外科
歩くことができない、内科治療を実施するも再発を繰り返す場合は外科治療が選択されます。
手術前検査
手術の実施が決まれば、麻酔をかけた画像検査は必要不可欠です。
ヘルニアを起こしている部分を具体的に確認し、手術計画を立てます。
手術方法
手術では、椎体に穴を開け、はみ出ている椎間板を取り除きます。
「片側椎弓切除術」と呼ばれる手術が一般的です。
ヘミラミネクトミーと呼んだりもします。
片側椎弓切除術の他にも、様々な手術方法がありますが、椎体に穴を開ける範囲や場所によって名前が変わります。
どの手術も目的は同じで、脊髄を圧迫している物質を取り除くことです。
リハビリ
手術後はリハビリがとても大切です。
リハビリをすることで、脊髄の圧迫で働かなかった神経、筋肉などを使い、それらの働きを思い出させるのです。
術後すぐに歩ける子もいれば数ヶ月かかる子もいます。
症状が重たいと、後ろ足に麻痺が残ることもあります。
予後
椎間板ヘルニアの予後は一般的には良いとされています。
しかし、歩けなくなってしまった子が手術をしたから必ず歩けるようになるかというと、残念ながらそうではありません。
手術自体は成功しても、歩けない状態が続いたり、
自分の力で排尿ができずに、飼い主のサポートが必要なこともあります。
歩けない場合でも、車椅子を使うことで自由に動くことができます。
車椅子にご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。
まとめ
椎間板ヘルニアは突然起こります。
特に、椎間板ヘルニアになりやすい犬種の場合、日頃から気を付けることで少しでもリスクを軽減することが大切です。
- 階段、ソファなどの上り下りは極力控える
- 抱っこするときは腰が地面と並行になるように水平に抱っこする
- 床を滑りにくいようにする
など、できることから始めてみましょう。
「もしかしてこれは椎間板ヘルニアかな?」
そのようなご心配がある方は、ぜひ当院へご相談ください。適切な診断、治療のご提案をさせていただきます。

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