犬の下顎骨骨折|腫瘍や歯周病など意外な原因も?獣医師が解説

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犬の下顎骨骨折|腫瘍や歯周病など意外な原因も?獣医師が解説

犬の上顎や下顎が骨折することを顎骨骨折といいます。
犬の顎骨骨折はほとんどが下顎骨の骨折で、これを下顎骨骨折と呼びます。
顎の骨の骨折と聞くととても恐ろしいイメージが湧きますよね。
しかし犬の下顎骨骨折は意外と珍しいことではありません。
「犬の下顎骨骨折にはどんな原因があるの?」
「愛犬が下顎骨を骨折したらどうなるの?」
「下顎骨骨折を予防する方法はあるの?」
このような疑問をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は犬の下顎骨骨折について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の下顎骨骨折についての理解を深めていただければ幸いです。

犬の下顎骨骨折の原因

犬の下顎骨骨折の原因には

  • 事故などによる外傷
  • 重度の歯周病
  • 口腔内腫瘍

などがあります。
交通事故などの外傷での下顎骨骨折では、強い衝撃が加わったことが予想されます。
この場合は下顎骨だけではなく体の他の部分にも損傷が及んでいることがあるため注意が必要です。
歯周病が重度になると歯槽骨という歯の下の下顎骨にまで炎症が及び、骨が溶けて吸収されていくという現象がおこります。
これを骨吸収といいます。
下顎骨の骨吸収がおこると下顎骨が細くなり、少しの衝撃でも骨折しやすくなりますね。
外傷や歯周病と比べると頻度は稀ですが、口腔内腫瘍が下顎骨に浸潤して骨折を引き起こすこともあります。

犬の下顎骨骨折の症状

犬の下顎骨骨折でみられる症状は

  • 食欲が低下する
  • 食べ物をうまく飲み込めない
  • 口周りを触られるのを嫌がる
  • 口から出血する
  • 口からよだれがたくさん出る

などです。
このような症状がみられたらなるべく早く動物病院を受診しましょう。

犬の下顎骨骨折の治療

おもちゃをかじるトイプードル

犬の下顎骨骨折の治療には

  • 温存療法
  • 創外固定
  • 外科手術

などがあります。
それぞれについて解説します。

温存療法

温存療法が適応になるのは骨折部位の骨のズレが軽度で周囲の組織がしっかりと安定している場合です。
このようなときはエリザベスカラーなどをつけて安静にし、骨が自然に融合するのを待ちます。

創外固定

創外固定が適応になる下顎骨骨折は

  • 骨折部位の骨のズレが軽度な場合
  • 歯の動揺や欠損がみられる場合

などです。
歯の動揺や欠損があると外科手術でのワイヤーを用いた固定方法ができなくなるため創外固定が適応となることがあります。
創外固定では医療用テープなどを使って骨折部位を保定します。
このとき口を1〜2cmは開けられるようにしておいて、口からの食事ができるようにするのがポイントです。

外科手術

骨折部位の骨のズレがある場合には外科手術が適応となります。
外科手術には

  • ワイヤーを使う方法
  • プレートやピンを使う方法
  • 顎骨を除去する方法

などがあります。
それぞれについて解説していきましょう。

ワイヤーを使う方法

犬歯よりも前方の下顎骨骨折や下顎骨結合部が分離している場合に行います。
両側の犬歯にワイヤーをかけて下顎骨を固定します。
犬歯が動揺していないことや欠損していないことが必須の条件です。

プレートやピン使う方法

犬歯より後方の下顎骨骨折の場合にはプレートやピンを使って固定を行います。
プレートやピンが設置できる下顎骨の幅があることや、下顎骨の骨吸収が起きていないことが適応条件です。

顎骨を除去する方法

歯周病による下顎骨骨折で、重度の骨吸収が見られる場合には下顎骨を除去しなければならないことがあります。
歯周病は早く対処すれば下顎骨骨折にまで悪化させずに済むことが多いです。
しかし歯周病をはじめ、口腔内の病気は目に見えにくく発見が遅れる傾向があります。
愛犬の些細な症状に気付いたときにはなるべく早く動物病院を受診しましょう。

犬の下顎骨骨折治療後のケア

下顎骨骨折の治療後は

  • 痛みの管理
  • 感染予防
  • 食事管理
  • 定期的な再診

が必要です。
痛みの管理のために鎮痛剤や抗炎症薬などの薬を処方されることがあります。
感染を予防するために抗生物質も必要な場合もありますね。
食事は顎に負担をかけないように柔らかい食事を与えます。
治療後の食事はドライフードをふやかしたものやウェットフードなどが好ましいです。
また下顎骨が適切に融合しているかを確認するために定期的に再診が必要です。

犬の下顎骨骨折の予防

ラブラドールレトリーバーにおもちゃを与える獣医師

犬の下顎骨骨折は痛みを伴い、食事とうまくとれなくなってしまう可能性があります。
できることなら予防してあげたいですよね。
愛犬の下顎骨骨折を予防するためにできることは

  • 事故になりうる状況を極力作らない
  • 歯周病を予防するためにデンタルケアをるする
  • 定期的に検診を受ける

などがあります。
脱走防止や転落防止など事故を防ぐためにできることはたくさん考えられます。
日々のデンタルケアも愛犬の健康のために大切なことです。
そして飼い主様が日々感じる悩みや、普段見られない口の中の状況の確認は動物病院で定期的な検診を受けることによって解決することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたか?
犬の下顎骨骨折は飼育環境の改善やデンタルケアで予防することができるかもしれません。
しかしどんなに気をつけていても完璧に防ぐことは難しいと思います。

当院では外科治療に力を入れており、日々の検診から下顎骨骨折の治療まで幅広く飼い主様の相談にお応えすることができます。
「最近愛犬が口を痛そうにしている。」
「愛犬の食欲がなくなってきてしまった。」
そんなお悩みを抱えていらっしゃるときはぜひ当院にご相談ください。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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