犬の精巣腫瘍の外科治療|精巣の腫れは腫瘍が原因のことも
未去勢の中高齢犬で注意が必要な病気の1つに精巣腫瘍が挙げられます。
いきなり
「あなたの犬は腫瘍かもしれません」
と言われると驚きますよね。
犬の精巣腫瘍は多くの場合、早期に発見し、外科手術による治療を行うことで治癒が望める疾患です。
今回の記事では犬の精巣腫瘍の外科手術に関して紹介します。
心当たりのある飼い主様は、ぜひ最後までお読みいただき、精巣腫瘍に関する理解を深めましょう。
犬の精巣腫瘍とは
犬の精巣腫瘍はおもに中高齢で発生し、去勢していない犬では2番目に多い腫瘍と言われています。
特に精巣が腹腔内にとどまってしまう潜在精巣の犬で発生リスクが高いです。
精巣腫瘍は割合としては良性腫瘍の方が多いですが、まれに悪性腫瘍が発生することもあります。
犬の精巣腫瘍の分類
犬の精巣腫瘍は精巣のどの細胞が腫瘍化するかで分類されます。
おもに以下の3種類に分類され、それぞれの発生率は同程度です。
セルトリ細胞腫
セルトリ細胞腫は生殖細胞を支えるセルトリ細胞の腫瘍です。
セルトリ細胞腫ではエストロジェンの分泌が過剰になることがあります。
セルトリ細胞腫の約3割でエストロジェンの影響により、
- 乳腺の発達
- 皮膚の脱毛や色素沈着
- 貧血
などの症状がみられます。
貧血が進行すると命に関わることもあるため、特に注意が必要です。
ライディッヒ細胞腫
ライディッヒ細胞腫は男性ホルモンの産生に関わるライディッヒ細胞の腫瘍です。
ライディッヒ細胞腫はアンドロジェンという男性ホルモンの不均衡を起こすため、男性ホルモンに関連した肛門周囲腺腫(肛門の周りにできる良性の腫瘍)や前立腺の肥大を伴うこともあります。
セミノーマ
セミノーマは精巣の精上皮細胞から発生する腫瘍です。
セルトリ細胞腫やライディッヒ細胞腫と併発することもあります。
犬の精巣腫瘍では貧血に注意が必要?
犬の精巣腫瘍では貧血の症状が見られることがあります。
ではなぜ精巣腫瘍が貧血につながるのでしょうか?
精巣腫瘍の1つであるセルトリ細胞腫で分泌が過剰になるエストロジェンは骨髄の働きに作用し、血液の生成を抑制します。
セルトリ細胞腫の予後には貧血の進行程度が大きく関わることが多いため、早期に治療することが重要ですね。
精巣腫瘍の治療
精巣腫瘍の治療の第一選択は外科手術です。
精巣腫瘍は適切に治療を行えば予後は良好であると言われています。
精巣腫瘍の手術方法
外科手術の方法は精巣腫瘍の位置や周囲への広がりによって異なります。
陰嚢に精巣がある場合は通常の去勢手術で腫瘍の摘出が可能ですね。
周囲の組織へ腫瘍が広がっている可能性がある場合は陰嚢ごと腫瘍を摘出することもあります。
腹腔内に精巣がある場合は開腹手術で腹腔内の精巣を摘出する必要があります。
外科手術の注意点
精巣腫瘍は外科手術で完治が望めることが多いですが、どんな症例でも適用になるわけではありません。
外科手術は手術自体の体への負担や麻酔のリスクも考慮して行う必要があります。
特に貧血が重度の場合は手術による出血で貧血がさらに進行し、命が危険にさらされることもあります。
また、他の臓器に転移してしまっている場合は外科手術のみでは不十分です。
その後の治療も見据えて精巣腫瘍の手術について考える必要があります。
精巣腫瘍を予防するためには?
犬の精巣腫瘍の予防には若齢のうちに去勢手術を行うことが効果的です。
精巣腫瘍は中高齢になってから発生することが多いため、若齢のうちに去勢手術を受けましょう。
特に潜在精巣の場合は腫瘍化するリスクが高いため、早めに精巣を摘出することをおすすめします。
まとめ
精巣腫瘍は良性であることが多いですが、早期に発見し、治療することが重要です。
腫瘍が発生してしまってから手術するのではなく、若いうちに去勢手術を行うことで腫瘍を未然に防ぎましょう。
犬の精巣の大きさに違和感がある場合はお早めに当院までご相談ください。

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