犬の骨盤骨折について|症状や治療法について獣医師が解説

走るアラスカンマラミュートとラブラドールレトリーバー

犬の骨盤骨折について|症状や治療法について獣医師が解説

犬の骨盤骨折は犬の骨折の中でも多くの割合を占めます。
高いところからの落下や交通事故などの強い衝撃によって骨盤骨折がおこります。
「犬が骨盤を骨折したらどんな様子になるの?」
「骨盤骨折した犬は歩けるようになるの?」
こんな疑問をお持ちの飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は犬の骨盤骨折について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、犬の骨盤骨折について理解を深めていただければ幸いです。

目次

犬の骨盤について

犬の骨盤は犬の腰回りにあり、体を支えるために重要な働きをしています。
骨盤は

  • 腸骨
  • 恥骨
  • 坐骨
  • 仙骨

などの骨から形成される箱型の構造です。
この骨盤に囲まれた空洞を骨盤腔といい、直腸や尿道が骨盤腔を通っています。
また坐骨神経をはじめとする太い神経も骨盤の周りを通っています。

犬の骨盤骨折の原因

犬の骨盤骨折の原因のほとんどが交通事故といわれています。
それ以外に

  • 高所からの落下
  • 人や犬に踏まれるなどの強い衝撃

などでも骨盤骨折が引き起こされることがあります。
特に若い犬は運動量が多く好奇心旺盛であるため、交通事故や外傷のリスクが高いです。
また小型犬は骨が細く折れやすいため、家庭内での高所からの落下によって骨盤骨折が引き起こされることもあります。

犬の骨盤骨折の症状

骨盤骨折の主な症状は

  • 歩行困難
  • 後肢の麻痺
  • 排尿困難
  • 便秘

などです。
骨盤は体を支える役割があるため骨折すると歩行が困難になります。
事故などの強い衝撃によって骨盤の周りの神経が傷つくと後肢の麻痺がおこります。
骨盤腔内にある尿道や直腸が骨盤骨折の骨片によって傷つくと、便秘や排尿困難になることもありますね。
症状の種類や重症度は、骨折の位置や重症度によって変わります。

犬の骨盤骨折の診断

犬の骨盤骨折ではレントゲン検査の評価が重要となります。

  • 骨盤のどの部分が骨折しているのか
  • 骨折による骨のズレはどの程度か
  • 骨片などが内臓に及んでいるか

などをレントゲンによって評価します。
内臓にダメージが及んでいる場合はより緊急な処置が必要になるため、身体検査や血液検査などでの全身状態の評価も非常に重要です。

犬の骨盤骨折の治療

横になって寝ているトイプードル

骨盤骨折の治療は骨折部位や骨のズレの程度によって手術の必要性と術式が異なります。
事故の衝撃で神経や内臓にダメージが及んでいる場合は、骨折自体の手術よりもそれらの治療が優先されるかもしれません。
骨盤骨折で手術が必要になる場合とならない場合に分けて解説します。

手術が必要な骨盤骨折

一般的に手術が必要になるのは

  • 変位のある腸骨の骨折
  • 寛骨臼の骨折
  • 仙腸関節の骨折

などの体重がかかりやすい部分の骨盤骨折です。
寛骨臼は骨盤と大腿骨の関節部位のことで、仙腸関節は仙骨と腸骨の間にある関節です。
これらの骨盤骨折の手術では、骨を元の位置に戻してプレートやスクリューで固定します。

術後は1〜2ヶ月は運動制限が必要です。
室内でも飛び跳ねたり走り回ったりしないよう、ケージの中で過ごさせるようにします。
また術後の経過によってはリハビリテーションが必要になることもありますね。

手術が必須ではない骨盤骨折

骨盤骨折のなかでも手術が必須でない場合があります。
例えば

  • 骨の変位がみられない骨盤骨折
  • 坐骨や腸骨のみの骨盤骨折

などのケースです。
このような場合は数ヶ月鎮痛剤で痛みを抑えながら安静の状態を保っていれば治癒することが多いです。

まとめ

草むらを走るヨークシャーテリア

いかがでしたか?

骨盤骨折は犬でよくみられるケガのひとつです。
骨折の程度にもよりますが、適切に治療を受ければ歩けるようになるまで回復することが多いでしょう。
逆に治療が遅れると排尿困難などが悪化して命に危険が及ぶ可能性もあります。
犬の骨盤骨折が疑われるときはなるべく早く動物病院を受診しましょう。

当院は外科診療に力を入れており、骨盤骨折をはじめとする整形外科手術にも対応可能です。
「犬が交通事故に遭ってしまって歩けなくなっている。」
「犬が高いところから落ちて様子がおかしい。」
このようなときはぜひ当院にご相談ください。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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