猫が前足をあげるのはなぜ?|前足の異常で考えられる原因とは

雪の中の猫

猫が前足をあげるのはなぜ?|前足の異常で考えられる原因とは

「お家の猫が同じ前足ばかりあげている」
「お家の猫が前足を浮かせたままぎこちない歩き方をしている」
このような症状に心当たりはありませんか?
実は前足をあげるという行動は足の痛みをかばっている可能性があります。

今回の記事では前足の痛みを起こす猫の整形外科疾患について紹介します。
症状に心当たりのある方はぜひ最後までお読みいただき、猫の整形外科疾患について学んでいきましょう。

目次

猫が前足をあげる原因

猫が同じ前足ばかりをあげる場合、痛みをかばうようないくつかの原因が考えられます。
以下では前足の痛みが生じるおもな疾患を見ていきましょう。

捻挫や打撲

猫が前足を痛める原因の1つは捻挫や打撲が挙げられます。
運動神経がよいイメージのある猫でも高い場所から落下するなど強い衝撃が加わることで怪我をしてしまうこともあります。
外傷のうち骨に異常がなく、筋肉や靭帯の損傷が疑われるものは捻挫や打撲の可能性が高いです。

骨折や脱臼

猫が飼い主様に踏まれてしまったり、交通事故に遭うといった重度の外傷では前足の骨折や脱臼を起こす可能性があります。
骨折や脱臼が生じた猫では、より強い痛みが生じることで、動きたがらなかったり、体に触れると怒ったりすることもあります。
猫は全身が被毛で覆われているため、骨折や脱臼している部位が判断しにくいことも多く、注意が必要です。

関節炎

関節炎がある猫では、痛みにより、前足をかばってあげることもあります。
特に高齢の猫では加齢に伴い関節の軟骨がすり減ることで関節炎を発症しやすいです。
関節炎をもつ猫では、関節の痛みを避けるために前足を浮かせ、段差を嫌がるようになることもあります。
関節炎は放置していると徐々に悪化する危険性もあります。

どうやって前足をあげる原因を判断するの?

横になっているキジトラ猫

猫の整形疾患のおもな検査は触診とレントゲン検査です。
まずは獣医師が猫の足を直接触ることで痛みが疑われる部分の腫れや足が動く範囲の異常を検出します。
さらにレントゲン検査によって骨や関節の異常、軟部組織の腫れを画像から評価します。
多くの場合は触診とレントゲン検査で前足をあげる原因を判断することが多いです。
それでも原因がはっきりしない場合はより詳細な情報を得るために追加でCT検査などに進むこともあります。

猫が前足をあげる疾患の治療

猫が前足をあげている時、その原因によって治療は異なります。
上記で紹介した疾患の治療について見ていきましょう。

捻挫や打撲

捻挫や打撲のおもな治療は痛み止めと安静です。
猫が走り回らないように狭いスペースで過ごせるように工夫したり、高いところに登れないように一時的にキャットタワーを撤去するなどの対策を行います。
軽い捻挫や打撲ではこれらの治療で3日ほどで改善することが多いです。

骨折

猫の骨が折れてしまった場合は、骨折した場所や骨折の程度により、ギプスによる固定や手術などが選択されます。

ギプスによる固定

ギプスとは骨折した部位を固定し、骨折部位が自然に癒合するのを促す方法です。
ギプスによる固定は比較的軽度の骨折や高齢や持病などで手術ができない症例に適用されます。

手術

上腕骨などの大きな骨の骨折では手術を行うことが多いです。
手術では骨を正しい位置に固定し、治癒を促します。
骨折部位や状態に応じて細い金属製のピンや金属のプレートを用いて手術を行います。

脱臼

脱臼の治療には骨を元の位置に戻す処置が必要です。
軽度の脱臼や脱臼直後では関節を正常な位置に整復し、固定します。
しかし、手で整復しただけでは再度脱臼してしまうことも多いです。
再脱臼してしまう場合や整復が難しい場合は手術によりピンやワイヤーで関節を固定して安定化させる処置が行われます。

関節炎

猫の関節炎に対しては痛みを和らげ、進行を抑える治療を行います。
猫の関節炎を完全に治すことは難しいですが、生活に支障がない程度に症状を抑えることは可能です。
また、関節炎を適切に管理するためには体重管理も重要です。
肥満は前足への負担を増大させるため、適正体重を維持しましょう。

前足の疾患が疑われる時、ご家庭で気をつけることは?

岩場を歩く三毛猫

前足に痛みがあるのに負担をかけ続けると、症状が悪化したり、歩行に支障が出る可能性があります。
ご家庭では以下の点に注意して環境を整えましょう。

  • 段差をなくす
  • 床をカーペットや滑り止めマットで覆う
  • 落下の危険のある家具に登れないように配慮する

また、出入り口の低いトイレを選ぶことで足への負担を減らすこともできます。
日常のささいな動作から負担を減らせるように工夫してみましょう。

まとめ

「猫が前足をあげる」という行為の中には痛みのサインが隠れていることもあります。
猫は自分で痛いと訴えることが難しいため、私たちがきちんと観察して気づくことが大切です。

当院では猫の整形疾患に関して診療を行っております。
今回の記事を読んで症状に心当たりのある方はお早めに当院までご相談ください。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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