避妊手術を受けたのに発情がくる?|子宮断端腫について獣医師が解説

うつ伏せで寝ているグレーの犬

避妊手術をした愛犬に数年経ってから発情のような行動がみられたことはありませんか?
もしかすると、その症状は子宮断端腫と言われる病気の可能性があります。

今回は、少しめずらしい子宮断端腫について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、避妊手術を受けた愛犬に発情がみられた際や、子宮断端腫と診断された際に参考にしてみてください。

目次

子宮断端腫ってどんな病気?

子宮断端腫とは、子宮の端(断端)にできるできもの(腫瘍)のことです。
避妊手術を受けた犬に発症します。
なぜ、避妊手術を受けたにも関わらず、子宮の病気にかかるのか、避妊手術の方法と一緒に解説していきます。

避妊手術と子宮断端腫について

避妊手術は、望まない妊娠を避けたり、ホルモンによる病気を防ぐために実施する手術です。
避妊手術には卵巣と子宮の両方を取り出す方法、子宮のみを取り出す方法の2種類があります。
どちらの避妊手術の方法でも子宮の組織を完全にとってしまうことはできません。
子宮組織の一部を体内に残した状態で子宮を切り取り、体の外に取り出します。
体内に残った子宮の端っこ部分が、時間をかけて反応し、炎症を起こしたり腫れたりすることで子宮断端腫となってしまいます。

子宮断端腫になる原因は?

子宮断端腫になってしまう原因として一番多いのが、お腹の中に卵巣が残ってしまっていることです。
他にも、細菌感染によるものもあります。子宮断端腫を発症してしまう原因について詳しく解説していきます。

卵巣が完全に取りきれていない

子宮断端腫の原因として多いのが、避妊手術の際に卵巣が完全に取りきれていないということです。
避妊手術では、卵巣と子宮を体から切り離して体外へ取り出すのですが、卵巣の一部がお腹の中に残ってしまうことがまれにあります。
お腹の中に残った卵巣から出るホルモンによって、体が「まだ妊娠の準備が必要」と勘違いしてしまい、子宮の断端が腫れてしまうことがあります。

子宮の断端に細菌が入る

子宮断端腫の原因として、避妊手術後に子宮断端に細菌が入り込んでしまうことがあります。
細菌によって炎症が起こり、子宮の断端が腫れてしまうことがあります。

どのような症状が出るの?

子宮断端腫の症状は、はじめのうちは無症状のことが多いですが、次のような症状がみられることがあります。

  • おしりの周りにおりものや血のような液体がついている
  • 発情期のような行動がみられる(マウンティングなど)
  • 元気や食欲がなくなる

子宮断端腫になったらどのような治療をするの?

子宮断端腫は、薬などの内科治療で腫れをひかすことはできますが、薬で子宮断端腫を完治させることはなかなか難しいです。
子宮断端腫を完治させるには、手術で子宮の腫れている部分を取り除くことが必要です。
卵巣がお腹の中に残っている場合は、卵巣も同時に取り除く必要があります。
放っておくと、炎症がどんどん広がってしまうため、早くに治療を始めることが大切です。

うつ伏せになっているシワがよっている犬

子宮断端腫の手術について

子宮断端腫の治療には手術をすることが1番となります。
避妊手術を受けたのにもう一度手術が必要と聞くと不安に思われるかもしれませんね。

ここからは子宮断端腫の手術について、詳しく解説していきます。

どのような手術をするの?

子宮断端腫の手術では問題となっている子宮や卵巣を綺麗に取ってしまいます。
具体的には次のようなことを行います。

  • 腫れている子宮の断端を取り除く
  • 卵巣の一部が残っている場合は今後も子宮断端腫の原因となるため全て取り除く
  • 子宮以外のお腹の中に炎症が広がっていたり、異常な組織がある場合は、それらを取り除く

腫れている子宮が実は腫瘍だったという可能性もあるので、取り出した子宮の一部は病理検査を実施し腫瘍かどうかを判断します。

手術のリスク

子宮断端腫の手術にはどのようなリスクや合併症があるのでしょうか。
お腹の中の状態や、犬の持病によって手術の難易度は変わってきます。
多くの場合は、安全に手術を終えることができますが、手術を受ける上で知っておくべきリスクを解説していきます。

出血のリスク

子宮の断端が重度に腫れていると、子宮断端からの出血が起きやすくなります。
子宮断端の腫れが周りの臓器を巻き込んでいる場合、出血をさせないように丁寧に剥がしとる必要があります。

再発のリスク

手術後も卵巣の一部がお腹の中に残っていると再発するリスクが高くなります。
再度の手術はほとんどまれです。

手術を受ければ治るの?

子宮断端腫は、手術を受けることで完治することがほとんどです。
しっかりと手術を受けることで再発のリスクはほとんどありません。

子宮断端腫を体の中に残しておくと、どんどん悪くなる可能性があるので、早めに治療することが推奨されます。

まとめ

子宮断端腫は、避妊手術を受けた犬に起こる子宮の病気です。
子宮断端腫の原因の多くは体の中に残ってしまった卵巣が悪さをしており、手術を受けることで、完治が見込めます。

避妊手術を受けた愛犬に発情行動がみられたりおりものがみられた際には、ぜひ当院へご相談ください。
診断から手術まで、しっかりとサポートさせていただきます。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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