猫のSUBについて|尿管に結石が詰まったらどうする?獣医師が解説

トイレに座る猫

猫のおしっこトラブルは猫を飼う上で最も心配なことの1つですよね。
尿管結石や炎症が原因で尿管が閉塞したことのある猫の飼い主様もいらっしゃると思います。
猫の尿管閉塞に対する治療の1つにSUBというものがあります。
SUBとは尿管の代わりに腎臓と膀胱をつなぐための人工のデバイスのことです。
「SUBと言われても、難しくてよくわからない。」
と思われる方も多いと思います。

今回はそんなSUBについて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、SUBについての理解を深めていただければ幸いです。

目次

尿管の役割と尿管閉塞について

尿管は腎臓で作られた尿が膀胱に排出されるまでに通る管のことです。
猫の尿管は内腔の径が0.4mm程度しかありません。
これは犬と比べてかなり細く、猫の尿管はわずかな炎症や結石で閉塞してしまいます。
尿管が閉塞してしまうと尿の排泄が出来なくなり、急性腎不全となって死に至る可能性があります。
猫の尿管閉塞はできるだけすぐに閉塞を解除してあげる必要があります。

尿管閉塞の治療法

尿管閉塞の治療には内科治療と外科治療がありますが、積極的な外科治療で改善できることが多いです。
従来の外科治療では尿管結石の摘出や尿管ステントの挿入などが用いられてきました。
しかしこれらの手術は手技がとても繊細である上に合併症も多いです。
近年はこれらの手術に変わって、SUBという人工のデバイスを設置する方法が多く選択されるようになりました。

SUBについて

SUBとは人工のカテーテル型のデバイスです。
SUBは閉塞を繰り返す尿管の代わりとして、尿の通り道になります。
ここからは

  • SUBはどのように設置するのか
  • SUB設置後の洗浄

について詳しく解説していきます。

SUBの構造と設置方法

SUBの構造は3つに分かれています。
SUBを構成しているのは

  • 腎臓に設置するカテーテル
  • 膀胱に設置するカテーテル
  • 2本のカテーテルを連結する金属製ポート

です。
2本のカテーテル部分はそれぞれ腎臓と膀胱に設置します。
これはお腹の中にある状態ですね。
この2本のカテーテルを皮下に出して金属製のポートで連結し、皮下で固定します。
こうすることで閉塞した尿管を使わずに、SUBを通して尿が膀胱に排泄されるようになります。

SUB設置後の洗浄

SUBの設置後は皮膚の外側からポートにめがけて針状の器具を刺し、SUBの内部を洗浄できるようになっています。
SUBの設置後に最も多く発生する合併症は、血餅という血の塊がSUBに詰まって閉塞することです。
術後はこの合併症を防ぐためにSUBの定期的な洗浄を行う必要があります。

どんな時にSUBを設置するのか

尿管が閉塞したからといってなんでもかんでもSUBを設置するわけではありません。
SUBを選択することが多いのは

  • 尿管結石が多発している場合
  • 尿管結石や尿管炎による尿管閉塞を繰り返す場合
  • 尿管結石を摘出できない場所で閉塞を起こしている場合

などです。
それぞれについて詳しく解説いたします。

尿管結石が多発している場合

尿管結石が1つだけでなく、何個も尿管内に存在している場合はSUBの適応といえます。
尿管結石は1つであれば尿管を切開して取り出すことができます。
しかし尿管内に結石が何個もある場合はいくつもの箇所を切開しなければなりません。
尿管は非常に細く、デリケートな器官です。
何箇所も切開すればその分炎症などによって閉塞するリスクが高まります。
またとても繊細な手技を必要とするため、複数の尿管結石を同時に摘出するにはかなりの時間を必要とします。
長い麻酔時間が必要となり、猫にとって負担が大きいため危険です。
このような理由から、尿管内に複数の結石がある場合にSUBを選択することがあります。

尿管結石や尿管炎による尿管閉塞を繰り返す場合

尿管結石は腎臓で作られた結石が尿管に落ちてきて閉塞を起こします。
腎臓で作られる結石は猫の体質が原因であることがほとんどです。
そのため腎臓に結石がある猫は尿管結石による尿管閉塞を繰り返す可能性が高いです。
このような猫では何度も尿管切開のオペをしなければなりません。
猫への負担や尿管閉塞のリスクを最小限にするためにSUBを選択することがあります。
また、尿管炎といって尿管に炎症が起こって閉塞してしまう病態があります。
尿管炎は原因がよくわからないことが多く、内服薬での治療をしていても繰り返し尿管炎を起こす猫は多いです。
このような場合にもSUBを提案することがあります。

尿管結石を摘出できない場所で閉塞を起こしている場合

尿管結石は尿管のどこで閉塞を起こすかわかりません。
中には腎臓の出口付近で詰まって閉塞を起こしたり、膀胱の入り口付近で詰まって閉塞を起こすこともあります。
そのような場合は尿管切開で摘出するのが困難になるため、SUBを選択することがあります。

まとめ

いかがでしたか?
SUBについての理解を深めていただけたでしょうか。
SUBは比較的新しい術式です。
また、尿管に対する外科手術は高い技術と豊富な経験を必要とします。
そのためSUBの手術は全ての動物病院が対応できるわけではありません。

当院は外科に力を入れており、SUBの手術も対応可能です。
猫の尿管閉塞でお悩みの際はぜひ当院にご相談ください。

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診察時間
9:00〜11:30
17:00〜18:30
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監修獣医師

柏原 誠也 獣医師のアバター 柏原 誠也 獣医師 伊那竜東動物病院 院長

2013年に宮崎大学獣医学科を卒業し、勤務獣医師を経て、兵庫県の動物病院グループ 医療センター長補佐・院長を歴任する。
2023年には動物病院京都本院の院長に就任する。
2024年に伊那竜東動物病院の院長に就任し、地域に高度な獣医療を提供している。

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